独立開業の夢を果たした、岩津裕子さんへインタビュー

 

 

 

岩津裕子さんは、パシフィックカレッジオリエンタルメディスン・鍼灸東洋医学部をご卒業され(2014年夏)、NY州ライセンスをご取得後ご自身のクリニッ クを2ロケーションにオープンされました。NYでゼロから英語で鍼灸を学び、第2のキャリアとして鍼灸師・漢方医を選ばれた裕子さんに、10の質問を してみました。

 

Yuko Acupuncture クリニックオーナー・岩津裕子さん(NY州ライセンス鍼灸師・漢方医) 

アッパーイーストクリニックにて  

ロケーション:55 East 73rd Street, Suite GR New York, NY10021 (between Park and Madison Ave)

コロンバスサークルクリニックの

ご紹介ビデオです。

 

ロケーション:

1841 Broadway, Suite 509
New York, NY10023
(60th St, between Broadway and Columbus Ave)

 

 

http://www.yukoacupuncture.com/

インタビューの様子です。

①まずは鍼灸との出会いを教えてください。

 

・ 西洋医学以外の医学には全く関心がありませんでした。自身の健康上の理由で、友人の勧めもあり、学校にアプライする1年前から鍼灸・漢方医に通い始めたんですが、学校にア プライした理由は、1)この鍼灸・漢方医と話しているうちに、中医学の理論・哲学に興味を持った。2)その頃、手術を受け、医学(中医学、西洋医学を問わ ず)に興味を持った。3)西洋医学ではなく中医学を選んだのは、多くMD(Medical Doctor)は、他の仕事の経験がなく医者になるが、私の長所は、10年以上の社会人経験があることと、中医学では疾患の症状ではなく、原因にアクセス するので、これまでの経験が活かせると思ったから。

 

 

②パシフィックカレッジにて鍼灸マスターディグリーを取得し、NY州ライセンス取得後、独立開業…入学準備からここまでの道のりについて、教えてください。(情報収集から、学費の資金繰り•勉強と仕事の両立•実習等)

 

・情報収集: マンハッタンの鍼灸・漢方学校2校のオープンキャンパスに参加しました。Tri-Stateはフルタイムプログラムのみだったので、選択の余地なくPacific Collegeを選びました。

 

・入学準備: 必要書類の提出以外は特にありません。

 

・ 学費: フルタイムの仕事を並行していたので自費(無借金)です。。ちなみに、文化の違いですが、大半のアメリカ人は仕事を持っていてもFinancial Aid (国からの借金)を受けます。永住権を持たない外国人にはFinancial Aidは適用されないので、借金、貯金、仕事など、なんらかの資金繰りが必須です。

・両立: 仕事を続けていたので、学校(クラス・実習)は平日夜と土日に。仕事は、比較的自分のコントロールが効くポジションにいたので、出張などでクラスを休むこともありましたが、学業を優先できました。(例えば、出張を学校の休暇中に入れるとか。)

 

・ 学業: カリキュラムと自分の時間に合わせて、こなすのみでした。学校に来る時間が限られていたので、自分の取れるクラスやシフトに制限はありましたけど、大したことではなかったです。

 

・ NY州ライセンス取得: 卒業する1年前から順に4科目の試験を受け始めました(注: NY州のライセンスだけであれば2科目のみでOK)。卒業間際にまとめて受ける生徒が多い中、私は時間が限られていたので、早めに開始しました。

 

・ 開業: 卒業後も仕事を続けているので時間に限りがあったのと、不必要なリスクを軽減したかったので、Professional Corporationのファイリングは弁護士を雇用しました。銀行口座開設、アカウンタント雇用、必要書類準備、その他諸手続きは、自身のネットワークを活用。 同時期に卒業したクラスメイトは、同じ経緯をたどって開業するので、彼らと情報交換はよくやっています。

 

・クリニック探し: 個人ネットワークを活用しました。

 

 

③「ニューヨークの鍼灸事情」を、ゆうこさんの視点で語っていただけますか。(例えば、ニューヨークで診てきた患者さんの特徴、好み、症状、ニーズなど)

 

・ 学校のクリニックの患者: 主な主訴は西洋医 学で決定的な解決法がない疾患。ストレス、不眠、鬱などは多いですね。その他、私が診た患者では、耳鳴り、甲状腺低下、不妊、HIV+(による様々な症状)、呼 吸器系疾患など。腰痛、肩こりなどの外科より、内科疾患が多かったです。また、日本・日本人との一番の違いは、「定期メンテナンス(これと言って困った症状は ないが予防のために1-2週間に一度治療を受ける)」で来る人が多いことだと思います。

 

・開業後の患者: 9割が日本人。腰痛、肩こりなどが半分以上。

 

 

④大学の実習時代からこれまで診て来た患者さんの中で、人種の比率を教えてください。

 

・学校のクリニックは一般のクリニックと比べて低料金設定のため、低所得者層が多かったです。

 

⑤ゆうこさんの感じる「日本式の鍼灸と、パシフィックカレッジで勉強した鍼灸の違い」を教えてください。

 

・ アメリカの鍼灸学校は中国式鍼灸が主流です。Pacific Collegeは選択科目の一つに日本式鍼灸のクラスがありますが、必須ではないんです。私はこのクラスを取っていないので、日本式と中国式の違いはわかりません。

余 談: Berkeley, CAのAIMCは、日本人が経営しているので、日本式鍼灸をきちんとカリキュラムに組み込んでいる。

 

⑥日本人があえてアメリカ、ニューヨークで鍼灸資格を取る為に鍼灸留学をする意義は、何だと思いますか。(日本で鍼灸資格を持っている方、もしくは鍼灸をゼロから学ぶ方それぞれのメリットは?)

 

・何事も本人なりの思いを持ってやればいいことだと思います。両者が押さえておくべき点は以下。

 

 日本の鍼灸医がアメリカへ: なぜ日本を離れるのか。なぜヨーロッパなどではなくアメリカなのか

 

 アメリカでゼロから学ぶ: なぜ他の職業ではなく鍼灸医なのか

 

 

⑦ 東洋医学•鍼灸を英語で学ぶことに関して。 全米の鍼灸大学が外国人留学生に要求する英語力は、(米国大学卒業者を除く)TOEFL61点以上、しかしスピーキングは26点以上•リスニングは22点 以上(それぞれ30点配分)というレベルの高さ。ゆうこさんご自身は大学入学時、授業•実習に着いて行くだけの十分な英語力を持っていたと思われますか。 もしくは語学力が理由で苦労された点•克服法などあれば具体的にお願いします。また、他のESLの学生(英語を母国語としない学生)の様子は、ゆうこさん から見てどうだったでしょうか。

 

・私が受けた日本の中学高校(私立)の英語教育が、一般の公立中高とは違っていたため、渡米当初から英語に抵抗がありませんでした。

すでにアメリカ大学院の修士号を持っていたので、Pacific College入学にTOEFLは必要なかったんです。

外国人・アメリカ人に限らず、西洋医学用語は一般人には馴染みがないので、最初は辞書を引くことも多かったです。でも、次第に慣れましたけど。

 

実際、ESLの生徒はクラスの中で1割程度しかいませんでしたが、それなりに苦労はしていた様子ですね。

 

語学は筆記試験が高点数、滞在年数が長いなどの理由で出来るものではなくて、センス、間違いを恐れない図太さなどが重要なのではないでしょうか。そういう意味では完全にその人個人によると思いますよ。

 

あとは、英語の話と違うのですが、(Pacific College入学に際して)アメリカの学士号を持っていない人は、事前に数学の単位が必要なので準備をしておいたほうがいいですね。

 

 

⑧ 今後アメリカで鍼灸師ライセンスを取ろうとしている日本人鍼灸師への情報として。あえてNY州のライセンスを取るメリットはあると思われますか。あるとす れば、どのような点でしょうか。どの州のライセンスを取るのかという事は、自身の住居状況だけでなくマーケットなどの要因も大いにあると思うのですが、他 州とニューヨークでライセンス取得における相違点やマーケットの違い等、あれば気づく範囲で教えてください。

 

・なぜアメリカなのか。なぜNY(NYCを指す)なのか。この2点について自分なりの理由があればいいと思います。また、渡米、鍼灸医のどちらの優先度が高いのかにもよるでしょうね。

 

マーケットとしてのニューヨークに関してですが、

 

NYCは全米の中でもリベラルなので、鍼灸への理解も高いという点。

 

また、NY州はNCCAOMの試験4科目のうち2科目しか必要ないので、試験の観点で見ると他州と比べハードルは低いという点。

 

あとは、超競争社会の中で皆がストレスを抱えて生活しているようなNYCには、ポテンシャル患者の数は他州より多いと考えられる点…これらのことを考慮すると、NYというマーケットはビジネスをするのにはなかなか面白い場所だとは思います。

ただし、鍼灸医、カイロプラクター、セ ラピストなどの代替医学に携わる人口も他州より多いので、医者:患者比率で見れば医者としての競争も激しいかもしれないですけど。

 

 

他州のライセンスに関してですが、NYCにいると、隣接するNJ、CT州の資格を取る人も多いです。NJはアメリカの学士号が必要(アメリカ国外の学士号は不可)。これがネックになりNJの資格を諦めている人を数人知っています。

 

あと、ご存知かもしれませんが、社会文化的に鍼灸が最も受け入れられているのは、CA州をはじめとする西海岸。CA州では、鍼灸医は西洋医学の医者と同等で扱われるし、 primary care doctorにもなれる。またほとんどの健康保険が鍼灸に適用される。CA州は独自の試験システムを取っており、一番難しいといわれています。

 

 

以上のようなことを考慮すると、鍼灸がこれからもっと盛んになってくる可能性を秘めているNY州・東海岸はこれから面白いことになっていきそうな予感はしますね。

 

 

⑨ 鍼灸留学をする学生さんは大きく分けて2つのグループに分けられます。日本で鍼灸師をされている方がアメリカのライセンスを取得したいと思われている方 と、すでにアメリカにいらっしゃっている方がキャリアチェンジのために初めて(もしくは元々興味のあった)鍼灸を学ぶ方です。それぞれの方々に向けて、 メッセージやアドバイスがあればお願いします。

 

先にお話ししたことと重複するかもしれませんが、とにかく本人なりの理由があればいいと思います。

 

・前者へ-なぜアメリカか。

 

・後者へ-なぜ鍼灸医か。

 

あまり深刻に考えず、少しでも興味を持ってやりたいと思ったのであれば、まず始めてみること。自分に合うと思えば、続ける。途中で合わないと思えば、その時点で考え直して方向転換すればいいんですから。プログラム途中で退学していったクラスメイトもたくさんいます。

 

日本とアメリカで鍼灸の受け止め方は、全く違います。アメリカでは、new age, liberal, hippieという言葉に形容されるとおり、「新しい考え方を持った人」が鍼灸医や患者として携わるんですね。ハリウッドセレブがカッピングの跡を背中につけて レッドカーペットを歩く、鍼を定期的にうけて健康を維持していると公言することなどが「オシャレ」だとされていたり。また、予防医学として中医学を活用する人は(特に気になる症状がなくとも、メンテナンスとして定期的に治療に来る)、日本よりずっと多いです。ですので、日本でなくあえてアメリカで鍼灸ビジネスを考えていらっしゃる方は、そのような層をターゲットにマーケティングしていくというのも一つの手だと思います。

 

 

⑩クリニックを2ロケーション(アッパーイースト&アッパーウエスト)オープンされたそうですが、これらのロケーションを選ぶに至った経緯を教えてください。 また、それぞれのクリニックの特徴や魅力を教えてください。

 

・それぞれ、Pacific Collegeのクラスメイト、クリニックのスーパーバイザーから偶然つながり、それがきっかけで成立…自宅がアップタウンなので、2つとも場所には申し分はなかったことも決め手です。

 

とにかく私自身の時間に限りがあったので、能動的に場所を探したことはないんですよ。「自分自身をオープンにしていれば、おのずと向こうからやってくる」という感じで、この2ロケーションに決まりました。

 

 

最後に。

今回インタビューをして感じた事は、選ぶ職業が鍼灸だろうが何であろうが、大事 なのは「なぜそれをアメリカ、そしてニューヨークでしたいのか」、また第二のキャリアとして鍼灸師を選ぶ場合は「なぜ鍼灸師でないといけないのか、他の職 業ではだめなのか」というポイントがクリアになっていること。

 

しかし、同時に裕子さんがおっしゃるように「あまり深刻に考えず、少しでも興味を持ってやりたいと思ったのであれば、まず始めてみること。

 

自分に合うと思えば、続ける。途中で合わないと思えば、その時点で考え直して方向転換すればよい。」というような柔軟性も持っていることは、非常に大事だなと思いました。

 

この、「まず初めてみる」。行動に起こさなければ、本当に自分にその道が合っているかどうかも分からない。

 

しかしこの、最初の一歩を踏み出すのは、相当の勇気がいるのも確か。

 

不安が解消されるまで情報収集も必要でしょうし、入念な準備も、ネットワークも必要になってくるでしょう。

 

そのようなひとたちのためにも、これからもNYでご活躍される鍼灸師の方々のインタビュー記事も含めて、できる限りの有効な情報・ネットワークをご提供できるNY東洋.comでありたいと改めて思いました。

 

ご協力いただきました岩津裕子さんへ、心より感謝いたします。

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